協力隊の体験と精神科OT—青年海外協力隊・随筆

　十年ほど前，マレーシアに青年海外協力隊の一員として派遣され，得難い体験をいたしました。私立の精神科ディ・ケア・センターを仕事場にしておりましたが，近くにある国立の精神病院も含めて，興味深い光景がそこここに見られました。

　日本でも精神医療の導入期には，様々な価値観が共存していたと思われますが，マレーシアの精神科医は，国の宗教であるイスラムに敬意を払い，時にはボモと呼ばれる祈禧師の力も借りて，病院の運営を円滑に計ろうと努めていました。オーストラリアやインドで資格を取得したOT達は，病院の中の美容院の一角を思わせるOT室で，ヘアーセットやマニキュア，別のコーナーでは料理を，手工芸をと，様々なアクティビィティに取り組んでいました。OTの他に患者と共に農作業などを担当する職員もおり，4000床の病院は，「松沢村」のような雰囲気を持っていました。