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■フィリピンのJOCV
青年海外協力隊(JOCV)は昨年が創立20周年であったが,その年の3月,TBS系テレビは定時ニュース番組の中で,フィリピンとタイに派遣されている隊員の活動を例に挙げ,彼らの活動とこれからの課題ということで報道していた.
フィリピンにおいて取材の対象となったのは,ルソン島北部の山岳県の一つ,ベンゲット県の県庁所在地,ラ・トリニダード町にある大学や研究機関に派遣された農業土木,養蚕の隊員であった.彼らは現地の人の家に下宿したり,部屋を借りたりして自炊しながら,草の根からの国際協力に取り組んでいた.インタビューの中で彼らは,当地に派遣された目的を踏まえて任務を全うすることは当然であるが,それにもまして,自分自身の行動を通して日本や日本人を理解してもらうことの方に重点を置いている,と述べていた.
バギオ市近辺に派遣された隊員はこの2人だけではないが,私も家族計画プロジェクトのため,バギオ市に住居を定めていた.そして,ここから車で約15分くらいの所にあるベンゲット県庁の人口部を拠点にして,国際協力に携わっていたこともあって,報道された2人も含め,ここに派遣された隊員と何度か顔を合わせ話合ったことがある.彼らが言うには,現地人と接するとき常に言われることは,文化,習慣などの違いから自分が意図する方向に目を向けてもらうことの難しさ,日本からは知識面では何も学ぶことはないというプライドの高さを重んじながら事を進めていかなければならないはがゆさ,等々であった.(「先進国から途上国へ来て物事を教えてやっている」というような態度で我々は決して臨んではならず,むしろ互いに学ぼうぐらいの気持ちで協力事業に携わっていかねばならない.)そのほか国際協力に関連した事柄についてこもごも話してくれた.
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