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はじめに:こうして協力隊に
福祉施設に勤務する傍らアメリカ留学を目指して語学に励んでいた私が,青年海外協力隊(以下,協力隊と略す)のパンフレットを手にしたのは,今から12年前のことである。私はそれまで協力隊についてその存在すら知らない状態であった。しかし,協力隊の「応募の手引き」を読み進むにつれ,OT協会と時をほぼ同じくして発足したこの国際的ボランティア活動に大いなる関心を抱いた。
当時,私はすでに臨床4年目であったが,身体障害者更生指導所や特別養護老人ホームなどもっぱら福祉関係を渡り歩いていたため,医療施設での勤務経験を持ち得なかった。ボランティアとはいえども,ある意味では日本のOTの代表として国際協力に関わるわけである。臨床経験では多分に異端児的傾向の強い私に,はたして任国の期待に添うような協力活動ができるだろうかという危惧のあったのは事実である。しかし,私の心は開発途上国という全く未知の世界に対する貧欲なまでの好奇心と,是非一度能力の限界に挑戦してみたいという欲望に駆り立てられた。
そしてさらに,新しい知識と技術を我々日本人に与えてくれた欧米諸国の恩師達への感謝を,今度は開発途上国の人々に協力することで表現できたらという気持もあった。
応募から出発まで紆余曲折はあったものの,幸い,マレーシアへの派遣が決定し,1976年10月,私はサラワクチェッシャーホームで協力隊員としての活動を開始した。
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