南極物語
やまと隊出発
大野 義一朗
1
Giichiro OHNO
1
1東葛病院外科
pp.1379
発行日 2001年10月20日
Published Date 2001/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407905328
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大陸での長期調査が進行する一方で,基地では安定した海氷を走り回って沿岸部の調査が活発化していた.地震計メンテナンスや定点GPS測定などは重いバッテリーを最後は人力で丘の上まで運ぶような力だけの仕事だったが,希望者が絶えなかった.海洋調査では氷に開けた観測穴からアザラシが顔を出し,人間を驚かせた.夜は冷たい寝袋のなかで様々な音が聞こえた.突風が遠くから迫ってきては轟音となり,行き過ぎていく.氷河が海に崩落する氷瀑の音が鈍く響く.海のうねりで氷山がきしんで鳴った.ルートを遮る数10kmの氷山を迂回したり,悪天で3,4日の停滞はざらで,作業はなにかと遅れた.行動予定は容易に延長したが「困った,帰れない」と基地に届く無線の声はどれも嬉々としていた.
そんな野外行動の医療体制は悩みの種だった.医師2名の一方は基地にいて他方が外に出たが,調査が重なると医師抜きのチームができた.事故の時は救援チームが到着するまでの数日を医師なしでしのがねばならない.
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