◆特集 作業療法の新しい領域
重症心身障害児への食事訓練アプローチ
酒井 和江
1
1国立武蔵療養所
pp.5-10
発行日 1985年8月15日
Published Date 1985/8/15
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はじめに
重症心身障害児(以下重症児と略す)にみられる食事摂食の困難さは,口腔機能そのものに問題がある場合と,食事行動の未発達な場合とに分けることが出来るが,多くの児では双方の問題をかかえている。重篤な口腔機能の障害を持つ児では,乳児期より哺乳困難があり,食べさせることそのものに介護者の多大な努力を要してきている。また食事行動の未発達,未学習がみられる児の多くでは,離乳期に問題を生じている。このような児は,口の閉じが悪く食物や水分をこぼし易いことから,寝かせて食べさせられていることが多い。柔らかい食物以外は押し出してしまったり,又,飲み込みが悪いことから,母親は一日中児につきっきりで,飲み込んだら次の食物を口に入れるということを繰り返していたという例もよく経験される。この結果は,介護者に特別な食事を用意させ,特別な日課を組ませる必要を生じ,この子はこのような物をこうしてしか食べれないという思い込みを持たせ,一方では余裕のない生活を余儀なくさせる。
重障児を介護する者の余裕の無さは,入所児に対しても同じで,一定の食事時間に,全員に食事を摂らせなくてはならないという制約は,ともすると選ばれた一部の子供達だけに食事指導を行うのが精一杯となる。幸い,当病棟では,昭和54年学校教育が開始され,教員が昼食時の食事指導に加わるようになり,以来,全入所児を対象とした食事指導が実施されるようになった。
このような経緯のもとで,著者の経験から得られた食事訓練アプローチにつき報告する。
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