- 販売していません
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
精神障害を経過した人にとって,労働自立した生活を長期間送って行くには,並たいていでないことは御承知の通りである。やっとの思いで適職を見つけ意気揚々と働きに出ても数日間で止めてしまうケース,また経済的に苦しい生活を送っていて,何がなんでも働かねばならないと強い動機を決して仕事に出るが,やはり長続きせず,自ら止めたり,断わられたりする。しかし中には,病状も不安定で,働く意欲,目的も薄く,多分続かないだろうという予測をたて,出した人が,3ケ月,1年と思いの外,長続きし貯金もしているというケースもあって,労働につかせる対象の基準,及び対処方法が明確化されない。
一方仕事を持つことによって,家族にも認められ,社会人と同等に見られ,存在感が充足される。また得た収入によって,好きなものが買え,趣味等も広がってくる。反面,苦しいこと,つらいこと等も同時に体験する。この相反する事態の繰り返しが所謂,労働生活そのものであり,そこから生きがいも生まれてくる。
当センターへの通所者は,5年から20年以上の入院生活,或いは在宅のままで長期間,社会と隔離された孤立的な日々を送っている人達が大部分を占める。当然そこには,社会集団の中での一定の規律・役割等を遂行する能力や時代の変遷を感じさせる色合いは希簿である。
このような人達に対して,労働生活における仕事の遂行能力,対人関係,社会ルールへの適応,精神疾患の自主管理,及び労働生活を通して将来への生活の広がり,生きがいや自信等について,各個人がどのように受け止め,何を期待しているかを明らかにすることを今回の調査目的の基礎とし,実際に短期集団アルバイト体験によって,社会の中で就労経験をし,そこから得られるものは何かを抽出する。それに加えて,職場の管理,指導者及び同僚は,彼等をどう受け止め,指導したり,付き合ったりしてくれているのか,それ等を再び対象者にフィードバックして,更に自己確認と将来に向けての問題点の改善に役立てて行くと同時に,職員側にも各人に応じた効率的援助技術を探す手がかりに役立たせたいと考えた。
Copyright © 1984, Japanese Association of Occupational Therapists. All rights reserved.