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高齢者の嚥下障害のいろいろ
「高齢者の嚥下障害」は近年注目を集めており,さまざまの概念がここに含まれる.さまざまな原因による嚥下障害が高齢者に発症した場合を高齢者の嚥下障害と呼ぶこともできるし,高齢者の加齢による嚥下機能の低下を指す場合もある.臨床的には,脳卒中や神経筋疾患など,嚥下機能に関与する明らかな脳・神経・筋症状を疾患の症状としてもたない有病高齢者や,要介護高齢者におけるさまざまな複合要因による嚥下障害症例に難渋することが多い.このような状態への対応は,脳血管障害の症状による嚥下障害などへの対応とは質的に異なることも多く,複合的な対応を要するため.本稿では後者を中心に述べることとする.また,高齢者の嚥下障害をテーマにする場合は,終末期や自然経過での死期の問題が常にある.近年,高齢者の肺炎に,「治さない選択肢」が示されたように,「高齢者の嚥下障害」には,「十分経口摂取できない場合の判断」(人工的な栄養方法を取り入れるかどうか)が大きな論点になるが,今回はそのような終末期またはプレ終末期状態については論じないことにする.
古典的には,高齢者の嚥下機能には,加齢による嚥下機能の低下(反射の遅延・唾液分泌の減少・喉頭位置の低下)の部分と,多くの高齢者がもつさまざまな病態(歯牙の欠損・脳動脈硬化・頸椎変形やアライメントの不良・内服薬副作用など)による修飾があることが指摘されている.個々の症例においてはこれらは混在していることが多い.しかし,高齢者の嚥下機能の低下(presbyphagia:老嚥)は必ずしも病的な状態とは言い難い.多くの高齢者が,低下した嚥下機能を有しつつ,食事を摂取し,誤嚥性肺炎を起こしていない.しかしながら,さらに高齢化したり,要介護状態になったり,病気などで全身状態が悪化したことを契機に,嚥下障害が顕在化したり,誤嚥性肺炎を契機に嚥下障害がみつかったりする.
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