Japanese
English
講座 再生医学とリハビリテーション 2
脊髄損傷を標的とした再生医学
Regenerative medicine for spinal cord injury.
岩波 明生
1
,
中村 雅也
1
,
戸山 芳昭
1
Akio Iwanami
1
,
Masaya Nakamura
1
,
Yoshiaki Toyama
1
1慶應義塾大学医学部整形外科
1Department of Orthopaedie Surgery, Keio University School of Medicine
キーワード:
脊髄損傷
,
再生
,
神経幹細胞
,
可塑性
Keyword:
脊髄損傷
,
再生
,
神経幹細胞
,
可塑性
pp.1029-1037
発行日 2005年11月10日
Published Date 2005/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552100211
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はじめに
脊髄損傷とは,交通事故や高所転落に伴う脊椎脱臼骨折などの外傷で脊髄実質が損傷されることにより,損傷部以下末梢の運動・知覚・自律神経系の麻痺を呈する病態のことである.現在,本邦で約10万人,米国でも約25万人の患者がおり,年間本邦では5,000人,米国でも10,000人以上の患者が増加している.患者のほとんどが男性でしかも若年者が多く,近年,医療の進歩に伴い受傷後も生存すること自体は十分可能となっているが,それだけに日常生活の不自由さや精神的な負担が長期間にわたり患者を苦しめる結果ともなり,社会的な問題となっている.
近年までその治療法は,ステロイド大量療法による二次損傷の予防と拘縮予防のリハビリテーションが主体であり,再生医療という観点からは程遠かった.しかし神経発生生物学の進歩に伴い,中枢神経軸索の伸展制御の分子メカニズムや可塑性などが相次いで解明され始め,同時に中枢神経系にも自己複製能と多分化能を有した神経幹細胞の存在が明らかになるにつれ,損傷脊髄の再生を目指した研究が盛んになってきている.
本稿では,損傷脊髄の再生の可能性につき,近年の研究成果を紹介しながら概説する.
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