連載 MY THERAPY in series・16
Alexander-Adamsの手術私見
藤原 敏郎
1
1京都大学
pp.878-879
発行日 1963年11月10日
Published Date 1963/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409202923
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アレキの手術の成功不成功は,円靱帯の発見牽出にあると思います。出血のため,局所の解剖的所見を,全く不明にしてしまつて,苦心のあげく引き出してみたら,腹筋の一部であつたというように,簡単なようで一度こじれると,全く困惑させられるのが,この手術の特徴と思います。「円靱帯を見つけるには,外鼡蹊輪を見つける。外鼡蹊輪は,恥骨結節の直側上にある。そこには,イムラッハの脂肪塊がある。その上方に,鼡蹊管の内脚と外脚がわかれている。その間に脚間繊維がある。皮下組織を充分剥離して,筋膜を,完全に露出すれば,以上の解剖的所見がはつぎりするから,その上で,外鼡蹊輪から円靱帯を引き出せばよい。ただし,円靱帯は,恥骨結節の近くでは,繊維状に分かれているから,充分気をつけるように。また場合によつては,鼡蹊管をSpaltenして,円靱帯を探してもよい。」大抵の本にはこのようなことが,記載されていますが,これは,相当この手術に慣れた人が,これまた,ある程度の経験を,つんだ人に話す時になつとくのいくことで,初心の人には仲々わかりにくいことだと思います。その証拠に,皮下脂肪を充分除外してありのままに局所を展開しても,なおそれから先がうまく進まないことは,度々あります。
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