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はじめに
世界保健機関(WHO)のリハビリテーション(以下,リハ)の定義によると,「リハは,能力低下および社会的不利をもたらすような状態の影響を軽減し,能力低下および社会的不利のある者の社会的統合を達成するためのあらゆる手段を包含している.リハは,能力低下および社会的不利のある者を環境に適応するように訓練するだけでなく,彼/彼女たちの社会的統合を促進するため,彼/彼女たちの直接的な環境や社会へ,全体として介入することを目標としている.能力低下および社会的不利のある者自身,彼/彼女たちの家族および生活しているコミュニティも,リハに関係する諸サービスの計画立案および実行に参加すべきである」とされている1).
本学術集会の木村彰男大会長から,「包括的リハにおけるリハ科医の役割 」というテーマでのシンポジウムの企画を依頼された.リハの対象となる障害者の問題は単一のものであることはまれであり,一人の障害者には様々な問題が存在することが多い.それらの問題に応じて,リハは包括的に行われるべきものであり,「包括的リハ」という用語に違和感をもつリハ科医も少なくないと思われる.事実,ステッドマン医学大辞典には,「包括的ケア(comprehensive(medical)care)」という用語は,「総合医療(診療),包括医療(診療).急性・慢性疾患の患者に対する,従来の診療だけでなく,疾患の防止,早期発見,身体障害者のリハビリテーションをも含めた医療」と収載されているが,「包括的リハ(comprehensive rehabilitation)」という用語は収録されていない.
しかし,現実に「包括的リハ」という用語が,最近は呼吸・循環障害を含む内部障害のリハを中心に使用されるようになってきた2).本稿では,「包括的リハ」を解説すると同時に,リハに敢えて「包括的」という言葉をつけることの意義について考察してみたい.
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