精神医療の模索・2 患者の人権
医療事故の側面から
高田 利広
pp.161-164
発行日 1978年2月1日
Published Date 1978/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541206463
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医療の適法
現行精神衛生法が精神障害者の治療と保護を目的としていることは当然であるが,社会防衛の保安面から強制病院収容を中心として構成されていることも事実である.そこで,対象患者としての精神病質者問題,入院収容上の措置入院,同意入院の問題,在院中の行動の制限,退院手続の問題といった患者の人権侵害が危惧され,事実一部において摘発されていることも否めない.
元来,一般患者に対して身体に対する侵襲である医療が適法であるのは,医療が治療目的をもって行われること,患者について医学的適応性があること,患者について医学的正当性があることおよび患者の同意があることを要件とする.治療は患者の利益のために行われるのであって,患者の同意は絶対に必要な要件である.もっとも,意識不明の場合などでは推定的同意を擬制するのであるが,医療側に強制治療権があるわけではない.そのほか,例外的には公共の福祉・公序良俗の立場から,緊急避難行為,緊急事務管理としての治療が,患者の同意なくして行われるが,建前ではもちろんない.
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