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まえがき
わが国に近代リハビリテーションの理念が導入されてから20年余になる.この加速化されていく時流からみれば特に牛歩のごとき歩みかも知れないが,医療機関,障害者収容施設,授産所,身障者職業訓練校,福祉工場,そして,療護施設,特別養護老人ホームなどが各地に作られ,その数が社会福祉施策の充実度のバロメーターであるかの観を呈するほどである.しかし,その機能は必ずしも十分に生かされ,満足な成果をあげているとは云い難い.運営に一貫性がなく,人材養成も後手にまわり,各施設の機能が有機的に噛み合わないためである.
医療の場でも同じである.リハ科と臨床各科との関係もけっして円滑であるとはいえない.“リハ医療の発展を阻害するものは医師である”と囁かれるほど,医師のリハ医療に対する理解は乏しい.
リハ医療に従事しているものを支えているのは社会のニードと障害者や家族の笑顔であり,そして,何時かは同僚である臨床医から暖かく迎えられる日がくるという希望なのである.
先進国といわれる西欧諸国やソ連,中国の経済政策の行き詰まり,スエーデンや英国にみる福祉国家への夢の挫折などなどを前車の軌とするならば,今後はわが国でも社会福祉施策はその経済性と効率を問われるのは必須であろう.医療といえども例外ではあり得ないはずである.
リハ医療の経済的効率を考えるとき,それは2つの観点からみることができる.1つはリハ医療機関の適正配置と役割分担の明確化による社会的見地からするものであり,もう1つは,個々の総合病院のリハ科やリハ専門病院ではどのような運営方針が経済的に有利であるかという考え方であろう.
これらに言及するまえに,リハ医療の現状について一寸触れておきたいと思う.
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