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はじめに
術後の静脈血栓塞栓症は,現在トピックとなっている.肺血栓塞栓症(pulmonary thromboembolism:PTE)の原因のほとんどは下肢の深部静脈血栓(deep venous thrombosis:DVT)であり,この両者は同じ病態と考えられ静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism:VTE)と称されるようになった.
また,サッカーの高原選手のPTE,2004年中越地震での中年女性の車中死亡のニュースなどで国民にも周知のこととなった.
一方2004年に本邦で初の予防ガイドライン1)の発刊,診療報酬においても肺血栓塞栓症予防管理料の設定で,我々はVTE予防を必ず行わなければならないものとなった.また本邦でも抗凝固剤の認可により予防法も変化が起きてきた.正しい使用方法の指導のため日本整形外科学会では,ガイドラインの改定本2)を発行した.
PTEが一旦発症するとその約1/3が死亡に至るといわれ,そしてその約43%は,1時間以内の死亡との報告がある1).それ故,下肢のDVTの早期発見,予防が大切となる.私自身も3例の致死的肺血栓塞栓症を経験している.3例目の症例が,あまりに悲惨だったことにより本格的に予防に取り組むこととなった.
肺血栓の90%は下腿の血栓が原因とされている.特にヒラメ静脈の血栓には要注意である.下腿にできた血栓の15%はやがて近位に伸展してくるといわれている.徐々に近位に伸展してきたDVTは,突然一部が切れ肺に塞栓し,死亡にいたる.そこで無症候のうちに早期発見,治療することが必要となる.呂らによると剖検になるような症例はほとんどは浮遊血栓で,血流があるため下肢の腫脹が見られないという.
DVTはなぜできるのだろうか.すでに,1856年にVirchow3)が静脈血栓の発生要因について,血流の停滞,静脈内皮障害,血液凝固能の亢進の3つの因子を唱えてる.血流が停滞すると活性化された凝固因子の洗い流しが妨げられ希釈できず,血栓を助長する.また血管内皮が障害され血管内皮下組織が露出されると血小板が粘着して血小板凝集を引き起こし,凝固因子も活性化され凝固能が亢進されるという.
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