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増大特集 リハビリテーション医学2007―最近10年の動向とエビデンス
リハビリテーション・アプローチ
深部静脈血栓症
Deep vein thrombosis.
越智 文雄
1
Fumio Ochi
1
1自衛隊中央病院リハビリテーション科
1Department of Rehabilitation Medicine, Japan Self Defense Forces Central Hospital
キーワード:
深部静脈血栓症
,
肺血栓塞栓症
,
低分子ヘパリン
,
未分画ヘパリン
Keyword:
深部静脈血栓症
,
肺血栓塞栓症
,
低分子ヘパリン
,
未分画ヘパリン
pp.1171-1178
発行日 2007年10月10日
Published Date 2007/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552101082
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はじめに
従来,欧米に比べて日本では深部静脈血栓症(deep vein thrombosis;DVT)や肺血栓塞栓症の発生は少ないと言われていた.しかし,厚生労働省の人口動態統計では,肺血栓塞栓症による死亡者数は,この50年で10倍に増え,1988年には591例だったものが,1999年には1,738例と3倍になっている1).また,日本におけるDVTの発生率は,人工股関節全置換術後で27.4%,人工膝関節全置換術後で50.0%であり,欧米と大きな差がないと言われるようになった2).
DVTは血流遅延,静脈壁損傷,血液凝固性亢進が原因になって起こる(Virchow 3徴).血流遅延の原因として,骨折,手術後,疾患による長期臥床,手術時の駆血帯使用,股関節手術時の脱臼肢位,下肢の腫瘍による血管圧迫,妊娠などが挙げられる.静脈壁損傷の原因として静脈炎,外傷,手術操作,駆血帯使用,血液凝固性亢進の原因として血栓性素因(高リン脂質抗体症候群,アンチトロンビン欠損症,プロテインC欠損症など),血小板増多症,多血症,脱水などが挙げられる3).
リハビリテーションの対象患者の多くは麻痺があるため血流の遅延が起こりやすく,とくに急性期あるいは手術直後は安静臥床を要する場合も多い.また,下肢の損傷がある場合には静脈壁の損傷も起こりやすく,基礎疾患として血液凝固性が亢進している場合もある4).リハビリテーションの分野でもDVTや肺血栓塞栓症に対する注意が必要であり,リハビリテーション医もDVTの予防法,治療法について熟知しておく必要がある.
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