- 販売していません
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
ヒトの体力は20歳代をピークとし,それ以降10歳加齢するごとに5~10%ずつ低下する.これは,運動不足が原因ではなく,髪の毛が薄くなり,肌にしわが寄るのと同様,遺伝的要因によって筋肉の萎縮がおこるからとされる.そして,20歳代の30%のレベル以下になると自立した生活ができなくなり,要介護の状態となる.生活習慣病の発症時期が,この体力低下の始まる時期と一致することから,筋萎縮こそが生活習慣病発症原因の背景にあると考えることができる.事実,加齢による体力低下と医療費の上昇とは非常によく相関する.
このような背景のもと,「運動処方」は,予防医療の中で切り札として登場し,厚生労働省の「健康日本21」は,現場でスタッフが運動処方の指針となることを前提に策定された.しかし,その内容は,ポピュレーションアプローチに留まり,生活習慣病患者・予備軍,要介護者,リハビリテーション(以下,リハ)患者といったハイリスク者に対する運動処方の指針としては,ほとんど役に立たない.
今回の策定がハイリスク者にまで及ばなかった理由として,運動処方は,ハイリスク者に限らず個人の体力に合わせて実施する個別運動処方が基本なのだが,運動処方の効果対リスクに関する科学的証拠の蓄積が,今まで,わが国ではほとんど行われてこなかったからである.
一方,我々は,1997年から中高年を対象とした「熟年体育大学事業」を立ち上げ,過去12年間,運動処方効果に関して,ハイリスク者を含む4,000名のデータベースの構築に成功した.その成功の理由は,インターバル速歩,携帯型カロリー計,e-Health Promotion Systemによって,少人数の専門家で大勢を対象とし,安価で容易な遠隔型個別運動処方システムを開発したからである.本稿では,その開発の歴史と今後の生活習慣病・介護予防への展望を述べる.
Copyright © 2009, The Japanese Association of Rehabilitation Medicine. All rights reserved.