Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
はじめに
1996年,厚生省は日本における主要死因(悪性新生物,脳血管疾患,心疾患)の一次予防を重視する観点から,これまでの「成人病」に代わる「生活習慣病」という新たな概念を導入した.導入の目的は,国民に疾病予防のためには適切な生活習慣を保持することが大切であることを伝え,健康に対する自発性を促し,生涯を通じた生活習慣改善のための個人の努力を社会全体で支援する体制を整備することである.生活習慣病は「食生活,運動習慣,休養,喫煙,飲酒等の生活習慣が,その発症・進行に関与する疾患群」と定義されており,生活習慣を改善することにより,その疾病の発症や進行を予防できると考えられる疾患である.
1996年の患者調査によると,医療機関を受診している総患者数は,高血圧性疾患749万人,糖尿病218万人,心疾患204万人,脳血管疾患173万人,悪性新生物136万人であり,多くの国民が生活習慣病に罹患していることがわかる.また,1997年の死亡統計をみてみると,1位 悪性新生物,2位 心疾患,3位 脳血管疾患であり,生活習慣病が上位を占めている.これらのことから,生活習慣病を未然に予防すること(一次予防)は日本において重要な課題の一つであると考えられる.
近年,運動と健康に関する疫学である「運動疫学」に関する研究が数多く発表されている.運動疫学研究は,疫学の立場から運動と生活習慣病の一次予防に関する科学的な証拠を提供してくれる.米国スポーツ医学会(ACSM)は「運動負荷テストと運動処方に関するガイドライン」のなかで,これまでの運動疫学研究を整理し,身体活動あるいは高い身体能力を維持することによってどのような種類の生活習慣病を予防できるのか報告している(表1)1).
本稿では,前半に生活習慣病を対象とした運動疫学研究のいくつかを紹介し,後半には生活習慣病のなかでも最も死亡者数の多い「がん」に関する運動疫学研究を紹介する.
Copyright © 2003, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.