- 有料閲覧
- 文献概要
成人病予防対策から生活習慣病予防対策へ
わが国では1960年頃に「成人病」の概念が生まれ,大阪府立成人病センターをはじめとして各地に成人病センターが設置された.「成人病」は老年病と同義語で用いられ,老化(高齢化)が主な原因であると見られていた.当時はまだ脳卒中,虚血性心疾患,がんなどの危険因子が十分解明されていなかったために,定期検診による疾患の早期発見と早期治療が重視されていた.その後疫学的研究が進み,これらの成人病の危険因子や予防因子が解明され,生活習慣が疾患の発生に密接に関わっていることが明らかにされてきた.厚生労働省が成人病を「生活習慣病」と呼び変えたのは1997年であるが,日野原重明博士はすでに20年前の1977年に,喫煙,食生活,運動などの生活習慣が心臓病の原因になっており「習慣病」であると指摘しておられる(日野原重明:文明は心臓病をむしばむ,『中央公論』1977年12月号,120-131頁).もちろん生活習慣病のすべてが生活習慣に起因しているわけではないが,生活習慣が主な原因になっているので,生活習慣を是正することによって生活習慣病の予防が可能である.例えば,肺がんの約7~8割は喫煙が原因であると推計されているが,実際に欧米先進国では喫煙率の低下に伴って肺がんの死亡・罹患率が低下している.
がん,虚血性心疾患,脳卒中,糖尿病などの生活習慣病の危険因子はそれぞれ異なっている部分もあるが,喫煙,多量飲酒,不適切な食生活,運動不足など,各疾患に共通する生活習慣も多く,適切な生活習慣により一連の生活習慣病の予防が可能になる.厚生労働省は健康日本21の中間評価の結果も踏まえて,2005年に生活習慣病予防のための標語として「1に運動,2に食事,しっかり禁煙,最後にくすり」を提唱している.
Copyright © 2011, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.