第45回 日本リハビリテーション医学会 学術集会/横浜 《教育講演》
視覚失認症―見えている物が何かわからない
重野 幸次
1,2
1静岡市立清水病院リハビリテーション科
2静岡市立清水病院神経内科
pp.728-737
発行日 2008年11月18日
Published Date 2008/11/18
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はじめに
臨床研究では多数例での統計学的な解析から症例報告まで様々な見地からの研究がある.臨床研究の中には一症例の詳細な研究からこれまで見逃されていた多くの貴重な情報が収集でき,その病態解明に大きく寄与することができることがある.本稿で提示する連合型視覚失認症例はそのような症例である.高次脳機能の研究で大切なことは脳の機能を究めることにある.そのためには脳損傷以前の患者の脳機能の状態,患者の病前の諸々の能力を確認しておくことが重要になる.脳機能の研究は脳が障害され,その欠落症状から初めてその損傷部位の脳の働きを知ることとなり,その積み重ねが脳機能の局在論へつながる.最近はfMRI(functional magnetic resonance imaging)による脳機能の研究もあるが,脳画像診断の進歩はそれに大きく寄与している.呈示症例は知的能力がきわめて高く,しかも描画能力がすぐれており,諸検査には極めて協力的であり,発病後の症状,経過,現状を詳しく自分の言葉で説明する等,これまでの内外の報告例と比較しても,貴重かつ希有な症例である(本症例について病歴,経過等本稿で記載できない部分については他の論文1,2)も参照していただきたい).本講演ではこの典型的な視覚失認症例(特に連合型視覚失認症)を呈示しながら,視覚失認の診方を解説する.
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