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特集 日米合同セミナー—学習と行動の神経生理学的基礎
視覚失認—その動物実験による研究
Experimental Visual Agnosia
岩井 榮一
1
Eiichi Iwai
1
1福島医科大学・第2生理学教室
1The Second Department of Physiology, Fukushima Medical College
pp.71-86
発行日 1971年6月30日
Published Date 1971/6/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431904691
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はじめに
視覚失認とは視覚路系のみを通じての外界の対象認知の障害であると定義されている25,70,71)。これはまた,Gestalt知覚の障害とも,視覚対象に対する連合機能障害,意味把握障害とも言える。もちろん,要素的感覚障害(視野欠損,視力障害など)や一般的精神障害(痴呆,意識障害,情意障害など)があつても認知は侵害されるが,このような発現機序を持つものは視覚失認の範疇には入れない。このように概念的には明確であるにもかかわらず,実際問題としては,失語,失行と共に,視覚失認の具体的な解析は困難なものである。視覚失認症状と思われる臨床報告例は数多く,古くはギリシャ・ローマ時代にまでさかのぼることができる。しかし,それらの報告病態像は種々多様で,要素的感覚障害に類似したものや,一般的精神障害に基づくものではないかと疑えるものもあり,さらに他の感覚種失認,失語,失行の症状を随伴併合しているものも多い。従つて,剖検報告を伴つた,純粋な意味での視覚失認症例は極めて少ないといえる。また,病態生理学的には,視覚失認は大脳の特定領野の病巣症状とされているが,その定位に関しては議論がある。
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