第44回 日本リハビリテーション医学会 学術集会/神戸 《シンポジウム》若年者脊髄損傷のトータルケア―座長/富永 俊克・柳 重行
若年者(10~29歳)頚髄損傷の急性期治療から社会復帰までの自験例
植田 尊善
1
1総合せき損センター
pp.150-152
発行日 2008年3月18日
Published Date 2008/3/18
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はじめに
日本の脊髄損傷では,60歳代を中心とした高齢者頚髄損傷が大多数を占めるのが大きな特徴である.近年の高齢化社会は急速化し,この傾向はさらに顕著となっている.一方,10歳代,20歳代の脊髄損傷者も確かに存在し,その余命は45年以上に及ぶことがわかっている(Frankel1)).胸椎,腰椎部の脊髄損傷では,たとえ完全麻痺であっても正常な上肢機能により車椅子での完全自立が可能であり,社会復帰への医学的問題は少ない.一方,頚髄損傷においては,特に重度四肢麻痺例では,車椅子での自立に困難を極める例も稀ではない.いずれにしても残存余命の長い若年者にとっては,復学や復職し健常者と同様な人生を送ることが,急性期からの治療の最終目標である.
古澤ら2)の報告によると,若年者では復職する率は中高年者に比較すると高いというものの,12.3%であり,このうち完全対麻痺で22.0%,完全四肢麻痺に至っては1.9%に過ぎないものであった.
今回,総合せき損センター1979年開設以来2006年まで急性期(受傷後14日以内)から治療を行うことができた全脊椎脊髄損傷者(以下,脊損)1,962例の中から1,235例(63%)の頚椎頚髄損傷(以下,頚損)の中で若年者の社会復帰の現況を調査したので報告する.
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