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編集後記
藤田 郁代
pp.365
発行日 2023年12月15日
Published Date 2023/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.6001200451
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日本では穏やかな秋が過ぎていきますが,世界ではイスラエル・パレスチナ紛争やウクライナ・ロシア間の戦闘など悲惨な状況が続いています.すべての人々が共生できる社会を実現することがいかに難しいかを思い知らされる日々です.
今号には,原著5編,症例報告3編,短報1編が掲載されています.このうち,小山内奈津美氏と坂田恵理子氏の症例報告は言語聴覚療法のアウトカムを検討したものです.前者では,完全側臥位法と冷凍ゼリー訓練が重度偽性球麻痺患者の咽頭クリアランスや咽頭知覚改善等に効果があることが報告されています.後者では,音声障害や認知コミュニケーション障害を呈し,人工呼吸器管理となった終末期患者に対するAAC指導の有効性が検討されています.このような研究は,エビデンスに基づく言語聴覚療法(evidence-based practice:EBP)を実施する際の貴重なデータを提供します.EBPは,自分の経験や熟練にのみ頼るのではなく,信頼できる科学的根拠,患者や家族の意向や臨床家の専門的知識と経験などを統合して最良の評価・訓練・指導を提供する行動指針です.本誌は,言語聴覚障害がある人に対し,“信頼できる科学的根拠”に基づいた臨床が提供できるよう,言語聴覚療法のエビデンスを集積する役割を担っています.
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