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はじめに
「子ども虐待」を取り巻く状況が,いま大きく変わろうとしている。5歳と小学生の女児がそれぞれの家庭の中で不適切な養育を受けて虐待死した問題は,そこにかかわった専門職や地域の声が生かしきれなかったとして,また地域の中で声を上げることのできない子どもたちをどのように支えていくのかという課題を広く社会に問題提起した。子どもと親が安心安全に暮らせる環境構築,地域構築を,行政,子育て支援の専門職や実務職による実践だけではなく,社会全体で実践する段階に来ている。
2019年6月にも国会で可決される予定の児童虐待防止法改正案では,「体罰によらない子育ての推進」等に加え,「医師歯科医師,その他医療従事者,また,学校,教育現場における専門職の児童虐待問題へのかかわり」についても明記される。つまり,子どもにかかわるすべての医療従事者間での児童虐待の予防と防止に向けた知識の共有,支援体制の構築など,実践的な取り組みを進めていくことが期待されている。診療の現場や地域の子育て支援の現場において,乳幼児やその家族と地域で密接にかかわるリハ専門職にとっても非常に身近な問題になると考える。
他方,地域の子育て支援現場で,リハ専門職の必要性が近年,特に重視されていることを感じている。多くの親たちが,自らの子育てを通じて初めて子どもに向き合う中で,子どもの心身の成長発達に戸惑い,不適切な養育につながる可能性も少なくない。大きく報道される虐待事案はもちろんなくさなくてはならないが,日常の子育ての実際に戸惑う多くの子育て当事者に対しても「予防的」にかかわる必要がある。
「子ども虐待」という地域課題,特に「子ども虐待予防」の観点から,地域コミュニティにおける医療専門職が活躍する可能性について,筆者が実践する東京都江東区の子育て支援現場から報告する。
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