連載 判例にみるジェンダー・7
95歳の老母による息子ごろし
石井 トク
1
1岩手県立大学看護学部
pp.638-639
発行日 2001年7月25日
Published Date 2001/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611902690
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子ごろし
親が子を,子が親を殺すという悲劇は古くから存在していたが,ここ数年,親の虐待によって子どもが死亡に至る例が社会問題となっている。子ごろしとは,子どもに対して行なわれる殺人行為の一般用語であるが,虐待の結果による子どもの死亡も子ごろしであることに変わりはない。わが国では,かつてから子どもの年齢が1歳未満の乳児に対する嬰児ごろしと,親が道連れとしてしまう親子心中などがある。親子心中の様相はさまざまである。最近は乳幼児突然死症候群(SIDS)が関心を集めているが,その診断基準(2001年2月3日)のなかに「SIDS」,「SIDSの疑い」,「既知の疾患による死亡」,「分類不能」と共に「事故・虐待などによる死亡」が挙げられている。
本稿では母親による子ごろしを分析してみたいが,特に子どもの意思を無視した母親の子ごろしについて考えてみたい。子どもがいくつになっても親子関係は続くので,新生児から乳幼児,思春期の子,青年,成人まで親による子ごろしはある。殺害にいたる動機もさまざまである。特に,子どもが何らかのハンディを持っている場合,母親はこれを自分の責任に帰するところがあるのが,わが国特有の社会的文化的背景といえよう。
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