特集 在宅における呼吸リハビリテーション
嚥下障害と呼吸リハ
清水 充子
1
1埼玉県総合リハビリテーションセンター
pp.480-484
発行日 2017年6月15日
Published Date 2017/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5003200627
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はじめに
ヒトのスピーチと嚥下はともに舌や口唇,軟口蓋をはじめとする口腔の器官を使って遂行されている。口腔の器官を動かすことで成り立つ構音は発声に支えられて発現し,音を連ねて意味のあることばを作り出す。声は声帯で作り出されるが,声帯は生きるために行っている呼吸の呼気を利用して振動を起こすことによって初めて声を発することができる。こうして呼吸の道である気道の途中にある声帯で作られた声を使ってスピーチが作り出される。
一方,嚥下の道は食物を取り込み,閉唇し,舌,頬,軟口蓋,歯牙などを協調させながら使い,食べ物を飲み込みやすい形の食塊に作り上げ,間断なく行われている呼吸の道を一時ふさぐように遮断して食塊を通過させる。嚥下の瞬間は喉頭が挙上し,気道に飲食物が入らないように喉頭蓋で気道をふさぎ,さらに喉頭内で仮声帯,声帯が閉鎖し誤嚥を防ぐ。この瞬間呼吸は停止している。この状態を嚥下性無呼吸と呼ぶ。喉頭閉鎖に続いて食道入口部が開き飲食物は食道へ流入する。嚥下が無事に終了すると喉頭および喉頭蓋が元の位置へ戻り呼吸が再開する。この喉頭閉鎖および呼吸の停止時間は健常成人では0.3〜1秒とされている1)。
以上のように,スピーチと嚥下は切っても切り離せない関係を保ちながら遂行されている。健常者であっても,実は巧妙な機構で毎回の嚥下の安全性が保たれているといっても過言ではないであろう。そこに,加齢や疾病によって何らかの障害が生じると,この絶妙な機構がうまく遂行されず,誤嚥を引き起こし,さらに誤嚥による肺炎に至る危険性が生じる。本稿では,嚥下の機構と呼吸の関係に焦点を当て,誤嚥性肺炎の予防策をお示しする。
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