特集 ナースが病棟で行なう 呼吸リハの理論と実践
嚥下障害と呼吸リハ―解剖学的視点を中心に
鈴木 康司
1
,
堀口 利之
2
1河北総合病院耳鼻咽喉科
2北里大学医療衛生学部リハビリテーション学科言語聴覚療法学専攻
pp.750-755
発行日 2004年8月1日
Published Date 2004/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661100503
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はじめに
嚥下障害は「呼吸路の障害」である
嚥下は,急速かつきわめて精緻な運動である.通常の生理的な嚥下は,随意的な口腔期の運動から始まり,主に舌根によって食塊が咽頭内に送り込まれることにより,咽頭期の嚥下反射が惹起される.通常,食道入口部を閉じるために働いている輪状咽頭筋は,この嚥下反射の間のみ弛緩し,喉頭の挙上とともに食道入口部は開大する.食塊は開大した食道入口部を通過し,食道の反射的蠕動によって胃に搬送される.このような複数の異なった神経筋機構の働きが,速やかにつぎつぎと起こることによって嚥下は完了する.つまり,嚥下障害とは口から胃まで食塊を搬送する過程の障害である.
一方,食物搬送路と気道は咽頭で交差する形となり,肺呼吸を行なう多くの動物で口腔や咽頭でその一部を共有する形を取る.とくに直立歩行をする正常成人では,この共有部分が広い部分にわたっている.したがって,嚥下障害は呼吸路の障害ととらえることもできる.
このように嚥下と呼吸とは密接な関係があり,嚥下障害患者のリハビリテーションを考えるときには,呼吸障害についても同時に考慮しなくてはならない.
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