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在宅訪問における摂食嚥下リハビリテーションの必要性
在宅療養をしている重度障害児の医療的ケアの実態について,人工呼吸器使用23%,気管切開44%,酸素吸入29%,そして経管栄養は最も多く93%との報告1)がある。また,在宅の重症心身障害者において,「口に入れても嚥下困難」「経管栄養」の場合の14年間の生存確率はそれぞれ44.4%,37.7%であり,最重度の大島分類1の52.2%や頸定不可の57.3%よりも,著しく低い(表)2)。さらには,ある程度,自食可能な者を基準にした場合,経口摂取で介助されて食べている者では3.5倍,経管栄養のみで栄養摂取している者では8.2倍,そうでない者と比べて死亡率が高いという報告もある3)。このように,重度摂食嚥下障害は,生命予後に関与する可能性が極めて高いと言える。また最近の調査では,在宅医療患者の中で経管栄養により栄養摂取している者の割合は,0〜19歳の小児患者において5.2%と,65歳以上の高齢者の0.4%と比較して非常に多いという実態であった4)。以上のように,現在では医療的ケアが必要な多くの子どもたちが在宅生活を送るようになっており,医療的な介入の必要性を示すものと考えられる。子どもを在宅で育てる家族にとって,経管栄養から経口摂取に移行させたいという願いは強い。そのため多くの親は摂食嚥下リハビリテーション(以下,摂食指導)を受けたいという希望があるが,本人の体調や家族の事情など,さまざまな理由で外来受診が難しく,訪問診療での摂食指導を要望するケースは多い。しかし,在宅療養している子どもの摂食指導については,全国的に実施されているところはわずかであり,その実態報告もほとんどない。
筆者らはこれまで,所属する日本歯科大学において,在宅の子どもへの摂食指導を行ってきた5)6)(図1)。患者は0〜2歳の低年齢児が多く,疾患分類は染色体異常が最も多く,次いで神経系疾患である(図2)。気管切開している者は半数で,栄養ルートは胃瘻などの経管栄養が8割を超えていた。最も多い主訴は「経口摂取させたい」であるが,「食べることは諦めているが,唾液だけでも飲み込めるようにしてあげたい」「顔の筋肉が固まらないように間接訓練を教えてほしい」という声も少なからず聞かれた。摂食指導を実施した期間は個々によって異なるが,摂食指導を行ったことで機能低下した者はおらず,機能維持が6割強,機能獲得・機能向上は3割強となり,その効果が認められている(p<0.05)(図3)6)。
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