連載 感性の輝き・第24回
ARTを求めて
石山 寿子
1,2
1南多摩病院リハビリテーション科
2日本大学歯学部摂食機能療法学講座
pp.441
発行日 2015年6月15日
Published Date 2015/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5003200140
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転換点
STがまだ「言語療法士」などと呼ばれていた頃に臨床をスタートして,早25年以上が過ぎた。当時は入院患者さんで手一杯で,生活期への対応はほとんどできていなかった。患者さんの人生がどうなっていくのかなど,自分の職域とは違うものだと思っていたのかもしれない。
成人の病院に異動して2年目だっただろうか。ある日,外来患者さんが来ないため心配していたところへ,自ら命を絶たれたとの連絡が入った。「せっかく良くなってきたところだったのに,上を見ちゃったんですかね」という奥様の言葉に愕然とした。確かに失語症も改善してきていた。右麻痺のためにできなくなった家業も高校生の息子さんが継ぐことになり,一安心といったところだった。私は患者さんの思いにきちんと向き合っていなかったのだと痛感した。この出来事が私の臨床スタイルの転換点になった。
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