今月の臨床 ART 2006
ARTの健全な発展のために
ART施行施設に求められるもの
高橋 克彦
1
1広島HARTクリニック
pp.16-19
発行日 2006年1月10日
Published Date 2006/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100003
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
ART医療はほかの産婦人科医療と比べて以下の特徴がある.
1.チーム医療
ARTを実施するためには不妊症専門臨床医のほかに,泌尿器科医師,看護師,IVFコーディネーター,生物科学者,胚培養士,カウンセラー,受付,研究員などとの共同作業が必要となり,部門間の意志疎通が重要である.
2.培養室(laboratory,ラボ)の存在
ラボはART医療特有の部門であるが,高い妊娠率を得るためにヒト胚を培養するラボの明確な基準(施設,人的資源など)は存在しない.また,精子,卵,胚,凍結胚を取り扱うことによるリスクに対する基準もない.
3.急速な技術進歩
ICSI, PGDなどの新しい技術が普及し,また非配偶者間体外受精,代理母のように社会に影響を及ぼす問題も出現しているが,それらの適応,実施の是非について倫理的,社会的な対応が追いつかないでいる.
4.急速な施設数の増加
わが国の特徴として急速な施設数の増加が挙げられる.2004年度までに登録されたIVF実施施設数は600を超え,世界一であるが,その80%以上が年間IVF実施数100例未満の小規模施設である(2003年度).ART医療の水準を一定に保つにはある程度の治療周期数が必要であり,このような施設における医療の質の低下が危惧される.
以上のようなわが国ART医療の特殊性を考慮すると,ARTの健全な発展のためにART施行施設に求められるものは品質管理システム(quality management system : QMS)の導入であると考える.
Copyright © 2006, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.