特集 胸椎後縦靭帯骨化症—手術治療の進歩
特集にあたって
山崎 正志
1,2
1筑波大学医学医療系整形外科
2いちはら病院整形外科
pp.361
発行日 2024年7月3日
Published Date 2024/7/3
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5002202320
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後縦靭帯が骨化するという病態が初めて世に出たのは意外と新しく,1960(昭和35)年の月本博士による症例報告(剖検)を嚆矢とする.以後,後縦靭帯骨化に伴う重度の脊髄障害の報告がわが国から次々となされたが,その治療は混沌としていた.そのような中,1975年に当時の厚生省は後縦靭帯骨化症を特定疾患「難病」に指定し,「後縦靭帯骨化症調査研究班」を組織してAll Japan体制での治療法の開発を始めた.
1987年に千葉大学の井上駿一教授が研究班の班長に就任された.筆者は当時,大学院生であったことから,研究班の活動に加わるように井上先生から指示を受けた.1990年代になって,頸椎の後縦靭帯骨化症に対する治療体系の整備は進んだが,胸椎の後縦靭帯骨化症に対する手術治療は依然として混沌としていた.椎弓切除術,前方除圧固定術,後方進入脊髄前方除圧術(いわゆる大塚法),脊髄全周除圧術などの術式が行われていたが,いずれの術式においても術後麻痺が高頻度に発生し,胸椎後縦靭帯骨化症は難病中の難病とさえいわれた.
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