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はじめに
スポーツ選手は日常的に高負荷かつ反復動作を行うことが多く,通常よりも運動器疾患のリスクは高いといえる.一部の外傷を除いて,スポーツに伴う運動器疾患ではoveruseやbiomechanical imbalanceが関わっていることが多い4,8).病歴や理学所見,画像所見に加え,各競技に特有な動作も考慮して,症状の原因を正しく診断する必要がある.そして,たとえスポーツ選手であったとしても,まずは病態に基づいた標準治療が考慮されるべきである.しかし,スポーツ選手は大会スケジュールやチーム内でのポジション争い,部活動引退直前であるなどの事情により,スポーツの制限・休止などの標準治療が困難なことも多い2).一方で,障害を抱えパフォーマンスが低下した状態が長く続くことや,病態を悪化させることも避けなければならない.患者によって最善の治療は異なっており,競技レベル,年齢,目標とする大会,本人の希望を総合的に判断し,ときには治療よりも競技を優先させることも選択肢になり得るのがスポーツ選手の特徴といえる.
最終的にどのような治療を受けるか選択するのは患者自身であるが,医師は患者が正しい選択をできるよう十分に説明し,選択肢を提示する必要がある.当科ではスポーツ選手に対して,①競技を休止すべきか否か,②競技復帰までの期間と復帰までのリハビリテーション,③再発予防のためのコンディショニングの3点について特に重点的に説明している.復帰までの道筋を可能な限り具体的に説明することが,その後の治療への協力を得るためにも重要と考えている.また,先述したようにスポーツ障害の多くはbiomechanical imbalanceが関わっている4).潜在的なimbalanceを解消しなければ競技復帰後に容易に再発することから,当科では体幹コンディショニングを重視し,治療前よりもパフォーマンスを向上させることを目標としている.
症例によって病態や背景が異なるため,スポーツ選手と一括りにするのは適切ではないが,本稿では当科で実際に加療したスポーツ選手の症例を通じてスポーツ選手の脊椎障害に対する治療とスポーツ復帰の考え方について概説する.なお,本稿で想定する対象疾患は,スポーツに伴う亜急性〜慢性期で,神経症状など緊急性のある症状を有さないものと理解していただければ幸いである.
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