Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
はじめに
高齢者人口の増大と,椎弓根スクリューをはじめとした脊椎インストゥルメンテーションの進歩によって,成人脊柱変形に対して積極的に手術が行われるようになっている.成人脊柱変形,特に矢状面アライメントの異常は,痛みや日常生活障害に密接に関わる因子であることが過去の研究で明らかとなっており3),成人脊柱変形をどのように適切に矯正固定するかは,近年,脊椎外科において最も重要な課題の1つである.
特発性側弯症の遺残変形では,胸腰椎の側弯矯正が中心となるため,固定上端(upper instrumented vertebra:UIV)は胸椎に含まれ,固定下端(lower instrumented vertebra:LIV)を下位腰椎にするか骨盤にするかが議論となる9).一方で,下位腰椎の椎間板変性による後側弯が変形の中心である変性後側弯症では,LIVは骨盤となることが多く,UIVは高頻度で生じるproximal junctional kyphosis(PJK)を避けるために,T10以上の頭側にすべきとされてきた6).変性後側弯症が多くを占める成人脊柱変形の治療においては,下位胸椎から骨盤を固定範囲に含める脊柱骨盤固定が,現在のゴールドスタンダードである.
しかし,脊柱骨盤固定の負の側面については多くの報告がある.成人脊柱変形の患者は高齢で,心疾患や糖尿病などの併存症を抱えていることが多い.脊柱骨盤固定は出血量,手術時間,手術切開創が大きくなり,周術期の合併症が多いことが問題となる2).医療コストは,長範囲固定による高額な脊椎インプラントに加え,術後ICUの使用や合併症治療によってさらに増加する.また,術後腰仙椎の生理的可動性の消失により,体幹深屈曲を伴う日常生活に制限を生じることも明らかになっている4).
側弯変形が胸椎に及ぶ症例や,胸腰椎移行部に後弯がある変性後側弯症の矯正には,脊柱骨盤固定が必要であることには異論はない.しかし,胸腰椎部に後側弯のない腰椎後弯が変形の主体である成人脊柱変形に対して,腰仙椎に限局したshort fusionによる矯正が可能だろうか.本稿では,short fusionによる矯正後2年以上経過症例の成績を分析したわれわれの報告を概説し7),成人脊柱変形に対するshort fusion成功の条件について考察したい.
Copyright © 2022, MIWA-SHOTEN Ltd., All rights reserved.