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はじめに
脊椎術後感染(surgical site infection:SSI)は重大な合併症であり,患者の転帰悪化につながり得る.これまでの報告では,脊椎術後SSI発生率は0.5〜20%4,5,11,12,15,21,22)とされ,国内最大のSSIデータベースである厚生労働省院内感染対策サーベイランス事業(JANIS)のデータからも,脊椎固定術後のSSIが増加傾向であることやほかの整形外科手術(人工関節や骨折手術)と比べてSSI発生率が高いことが報告されており14),日本整形外科学会学術研究プロジェクトの調査結果からも,人工関節置換術後のSSI発生割合が1.36%であったのに対して,脊椎インストゥルメンテーション手術後SSIは3.73%と高い結果であった16).これらSSIは,術後転帰の悪化,さらに死亡につながる可能性があり7),具体的には,脊椎手術のSSIは腰痛やADL低下など術後アウトカムの悪化につながり,国内大規模アンケート調査において脊椎SSIでは,不完全な回復が31.3%,1年以内死亡が2.3%であったと報告されている19).また,SSIを生じると治療に長時間を要し入院期間が長くなり,医療コストも上昇し得る25).脊椎術後SSIが患者QOLや医療経済などに与える影響は大きく,適切な予防と治療が重要とされる.
SSI発生の季節変動については,特に夏には発生率が高くなるとする報告6)がある一方,季節と関係がないとする報告もある2).夏期における高温多湿の条件下では,手術室という管理された環境以外で細菌が増殖する背景がある.ほかにもさまざまな研究により研修医および手術フェローの手術経験と合併症との関連20)や,「July effect」といわれる手術スタッフの1年を通しての勤務サイクルが手術・SSI発生に影響を与え得ることが示されている26).しかしながら,脊椎手術に関する季節性SSIリスクや起因菌との関連を評価した報告は少ない.本稿では季節変動,起因菌との関係について筆者らが行った検討から文献的考察を述べる.
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