Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
はじめに
超高齢化社会を迎えているわが国では,腰部脊柱管狭窄症(lumbar spinal canal stenosis:LCS)の有病率は増加しつつあり,健康年齢の延伸という観点からも治療の重要性は増している.治療適応となる患者も高齢化しつつあり,90歳以上の患者の手術も決してまれではなくなっているのが現状である.このような状況で腰部脊柱管狭窄症に対する外科的治療として,近年間接的除圧術が注目されつつある.外科的治療としては後方除圧,または固定術を併用した後方除圧が治療効果の確実性からゴールドスタンダードであることは今後も変わらないであろう.しかし,硬膜外血腫や硬膜損傷などの患者にとっても医師にとってもありがたくない合併症は依然存在し,頻度は低いものの術後馬尾障害や排尿障害の発生といった重篤な合併症も存在する.Open surgeryをより低侵襲にする目的で,内視鏡下手術,経皮的内視鏡下手術も施行されているが,骨組織,黄色靭帯の切除と硬膜外腔操作により硬膜管への侵襲的手技を含むことには変わりがない.
脊椎外科医はLCSに対する手術効果,頻度は高くないものの各種合併症を知り尽くしており,過去のデータと経験から適切な手術適応を設定し,妥当な手術療法を行ってきた.中等症以上のLCSでは患者から求められた場合には手術適応とされるが,軽症〜中等度以下の場合あるいは画像所見が軽度な場合には,たとえ患者にとっては受け入れがたい自覚症状があり手術を希望されても,外科的処置を受けられないケースもあるのが現状であろう.すなわち,保存療法から除圧術,除圧・固定術,除圧を含む脊柱変形矯正固定術という治療ラダーにおいて,保存療法と除圧術とのギャップはかなり大きいといえる(図 1).この保存療法と除圧術の間の治療法における受け皿の欠損を補うものとして,治療効果の確実性の点では除圧術に劣るものの,より低侵襲で安全な術式の1つとしてinterspinous process devices(IPDs)がある.
しかし,筆者の使用してきたX-STOPは2015年に製造が中止されており,現在わが国でIPDsとして使用できるものはきわめて限られている.
本稿では,X-STOPの使用経験を振り返り,IPDsの現状と将来について述べる.
Copyright © 2021, MIWA-SHOTEN Ltd., All rights reserved.