Nomade
コロナ禍で想う一期一会
伊藤 圭介
1
,
武者 芳朗
1
1東邦大学医療センター大橋病院脊椎脊髄センター
pp.89-90
発行日 2021年2月25日
Published Date 2021/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5002201581
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東京都の1日の新規感染者が2,000人を超え,過去最多を更新するなど,いまだ終息が見えない新型コロナウイルス.この感染症は,命と健康に対する直接的な影響だけでなく,経済活動の停滞や学術集会の中止など多岐にわたって影響を及ぼしました.東京も以前の一時期は外国語が飛び交い,銀座の街角を大型観光バスが占拠する光景があり「爆買い」という言葉が大流行しましたが,このコロナ禍で街はひっそり静まりかえっています.学会はWEB開催へ,研究会は中止となり,心にぽっかり穴が空いたようですが,時間はあっという間に過ぎていきます.自粛生活で他人との関わりの機会も減り,寂しい時間を過ごすことが多くなりました.
ところで「一期一会」という日本らしい言葉があります.「一期一会」は茶の湯という芸術から出た名言です.「茶会に臨む際には,その機会は二度と繰り返されることのない,一生に一度の出会いであるということを心得て,亭主・客ともに互いに誠意を尽くしなさい」という意味で,今の出会い,今日の一日を大切にせよという言葉です.千利休の時代,今から500年も前のことわざですが,疾病の治療法も抗生剤もなく,寿命も短いため,人生における時間価値がとても高かった背景があったからこそ,一期一会という言葉が生まれたと思います.人との出会い,共に過ごす時間の希少性を感じるコロナ禍で,今あらためて一期一会の貴さに気づきました.
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