患者と私
一期一会
宮崎 五郎
1
1社会保険三島病院
pp.1288-1289
発行日 1967年9月20日
Published Date 1967/9/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407204405
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病名は同一であつても,われわれが取扱う疾患の一例一例がそれぞれ何らかの個性的な点を持つているものである.一期一会は外科の道を端的に表現した言葉であり,それに従う者の心構えを教えているものといえるであろう.
私は自分の手術した症例をメモ程度に病歴,検査成績,手術所見,手術操作,術後感想を記して保存し,その一連番号が6000になつた.初心は反省の資にでもしようと仰々しく考えたのであつたが,実のところは,本日ただいまは2度と経験できないもの,外科医の人生記録として日記代用ということである,相似た病気を取扱う時にはそれをひつくり返して当時の苦心や後でふり返ってこうすれば良かつたろうと思うという記事を読むと,その患者の様子から取交した会話の内容,果てはその風貌まで頭の中に蘇つてきて,思わず独り笑いをしたり,あらためて憤概してみたりすることさえある.
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