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病態
脊髄ヘルニアとは,脊髄実質が硬膜欠損部を通じて突出・嵌頓し,進行性の脊髄症を呈する病態である.近年,MRIなど画像診断技術の向上に伴い,その報告例は増加している.発生原因として,①術後の偽性髄膜瘤に続発する術後性,②脊椎の骨折後などの外傷性,③炎症性,④特発性の4つが文献的には挙げられる2)が,①の術後性以外は,明確にその病因を分類することは困難である.その病態は,何らかの理由により欠損あるいは脆弱化した硬膜部分に脊髄が髄液圧で押しつけられる状態が継続し,その結果この欠損孔より脊髄の一部が突出・嵌頓すると,徐々に脊髄症状をきたすものと考えられ,中でも特発性脊髄ヘルニアの報告が最も多い.特発性脊髄ヘルニアは中高年の女性に多く,発生高位はTh2/3〜7/8と上位から中位胸椎に好発するとされる2).解剖学的な胸椎の後弯もまた脊髄ヘルニアの成因に関与していることを示唆している.すなわち,胸椎後弯により,脊髄が硬膜腹側に接しやすい環境にあることが,成因に寄与していると考えられる.
当教室での16例の脊髄ヘルニアの手術症例では,男性7例/女性9例と女性がやや多く,手術時平均年齢は54歳(39〜78歳)であった.症状はヘルニアに伴う脊髄障害部位以下のいわゆるBrown-Séquard型の麻痺が多い.通常は下肢のしびれが初発症状であり,次第にしびれの悪化や知覚障害が出現し,さらに知覚障害が体幹部へ上行し,やがて下肢の運動麻痺,歩行障害,膀胱直腸障害などの脊髄症状が出現する.症状の進行が緩徐であること,また胸髄症であることなどから,症状出現から診断に至るまでの期間が長いことも注意を要する1).
相澤らは,文献的考察も含めて脊髄ヘルニアの脱出タイプを①直接脱出型(脊髄が直接硬膜外腔に脱出するもの),②二重硬膜型(脊髄が二重硬膜の内層と外層の間に脱出するもの),③硬膜外囊胞型(脊髄脱出が硬膜外くも膜囊胞の中に脱出するもの)に分類した(図1).
自験例16例は全例で二重硬膜を有していたが,一部には硬膜欠損部も同時に存在する症例が認められた.解剖学的な硬膜の異常や,欠損様式に従って上記の3タイプ,あるいはこれらの3タイプが組み合わさった脱出様式も存在すると推察される.
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