Japanese
English
特集 脊髄再生
亜急性期脊髄損傷に対するiPS細胞由来神経幹細胞移植
Transplantation of iPS-derived Neural Stem Cells for Spinal Cord Injury at Subacute Phase
名越 慈人
1
,
辻 収彦
1
,
岡野 栄之
2
,
中村 雅也
1
Narihito NAGOSHI
1
,
Osahiko TSUJI
1
,
Hideyuki OKANO
2
,
Masaya NAKAMURA
1
1慶應義塾大学医学部整形外科
2慶應義塾大学医学部生理学教室
1Department of Orthopaedic Surgery, Keio University School of Medicine
キーワード:
脊髄損傷
,
spinal cord injury
,
iPS細胞
,
iPS cells
,
神経幹細胞
,
neural stem cells
Keyword:
脊髄損傷
,
spinal cord injury
,
iPS細胞
,
iPS cells
,
神経幹細胞
,
neural stem cells
pp.557-562
発行日 2018年6月25日
Published Date 2018/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5002200895
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はじめに
脊髄損傷は,交通事故や転落・墜落外傷,コンタクトスポーツ事故などの高エネルギー外傷により,脊椎の安定性が破綻して発生する.また近年では,高齢者における転倒などの軽微な外傷により,頸髄損傷の発生が増加している.実際,急性期脊髄損傷患者の約半数以上が60歳以上の高齢者と考えられている.脊髄損傷に対して,われわれ整形外科医ができる治療は脊柱の再建(前方/後方固定術)および脊髄の除圧術が主であり,不可逆性変化を生じた脊髄神経に対する根本的治療法はない.メチルプレドニゾロンの投与が唯一保険適応で認められた治療法ではあるが,その効果についてはいまだに意見の分かれるところである1,2).
このような状況に対して,われわれは中枢神経由来の神経幹細胞を用いた細胞移植治療の実現を目指して,研究を進めてきた.特に,iPS細胞の誘導と作製方法が報告されて以降12,13),われわれは脊髄損傷に対するヒトiPS細胞を用いた基礎研究をさまざまな角度から行って,臨床応用に向けたエビデンスを蓄積してきた.その結果,適切なiPS細胞株を用いれば,移植されたiPS細胞由来神経幹細胞は腫瘍を形成することなく運動機能の回復に寄与することを動物実験レベルで明らかにした5,8,16).しかしその一方で,危険なiPS細胞株を用いると,いったん機能回復が得られるものの,その後徐々に運動機能が増悪し,組織学的にも移植細胞が腫瘍様増殖することを報告した7).本稿では,間近に迫ったヒトiPS細胞由来神経幹細胞の脊髄損傷への臨床応用に向けて,われわれがこれまで行ってきた有効性と安全性の検討について概説し,今後の再生医療の方向性を提示したい.
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