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ベバシズマブの薬理作用と分子生物学的意義
悪性腫瘍の増殖や転移など腫瘍の進展に際し,腫瘍内血流供給機構の構築は必要不可欠な要素となる.それゆえ,血管新生因子は腫瘍の増殖にきわめて重要であり,中でもvascular endothelial growth factor(VEGF)-Aは最も強力な血管新生因子の1つである.Glioblastoma(GBM)では壊死などとともに,微小血管ならびに血管内皮細胞増生をその組織学的特徴とするが,同時にVEGF-Aの高発現を伴うことが知られている.また,VEGFの発現はlow grade glioma(LGG)と比較してGBMにおいて著明に高く23),加えてLGGにおいてもVEGFの発現は独立した予後因子と位置づけられている1).このことからも,VEGFは腫瘍の悪性化に伴う血管新生において重要な役割を果たすのみならず,悪性グリオーマに対する分子標的としても治療効果が期待される14).VEGFは環境要因としてepidermal growth factor(EGF),fibroblast growth factor(FGF)-2,platelet-derived growth factor(PDGF)やtransforming growth factor(TGF)-βといった増殖因子,あるいは低酸素化によって過剰発現したhypoxia inducible factor(HIF)-1αなどによって活性化される.また,p53,src,RAS,VHL遺伝子などの変異によってVEGFの転写が亢進することで活性化が生じる10).この結果,過剰発現したVEGFは血管内皮上に特異的に発現しているチロシンキナーゼであるVEGFR1/2のリガンドとして結合し,チロシンキナーゼがリン酸化することで血管新生や血管透過性亢進するなどの作用を発揮する7).これに対しベバシズマブ(bevacizumab:Bev)は,VEGF-Aに対するIgG1ヒトモノクローナル抗体(分子量149KDa)であり,VEGFの生物活性を抑制する.これにより,腫瘍における血管内皮細胞の増殖を抑制するとともに異常血管の新生阻害を誘導し,その結果,血流供給機構の遮断に基づく薬理効果を発揮する10)(図1).また,Bevによる臨床効果は血管透過性の正常化が関与することが知られている22).
本邦においてBev(アバスチン®)は,悪性神経膠腫以外では2017年6月現在,切除不能な進行・再発大腸がん,乳がん,および扁平上皮がんを除く非小細胞がん,その他進行卵巣がん,進行または再発子宮頸がんに対し保険承認されている.
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