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はじめに
まず,temozolomide(TMZ)の構造式と生体内の変換過程を図1に示す.右端のメチルディアゾミウム イオン(methyl-diazonium ion:MDZI)が血液中から腫瘍組織中に浸透し,DNAをメチル化することが,TMZが神経膠腫に抗腫瘍効果を示す機序である(図2).MDZIは分子量が小さく,血液脳関門を容易に通過するため,神経膠腫に対する治療薬として注目されていた.この活性体はそのままでは不安定であり,薬剤としては,MDZIの前駆体(pro-drug)を生体に投与し,MDZIに変換させようとする試みが行われ,その薬剤の代表格はdacarbazine(DTIC)であった.DTICは肝臓で代謝され,最終的にMDZIに変換される.
DTICを用いた神経膠腫治療の試みはいくつか行われたが,その有用性を示すことはできなかった.原因は,強い催吐性と肝毒性であった.DTICは悪性メラノーマの標準治療薬として有名であるが,一方で使用頻度が少ないにもかかわらず,催吐リスクが高い薬剤として有名である.その使用に際してはaprepitant(イメンド)と5-HT3ブロッカーとデカドロンの3剤を使用して制吐を企画しないとならない8).前2者はDTICが開発された1970年代には存在せず,強い悪心・嘔吐により投与が中止になったことは想像に難くない.また,GOT,GPTは多くの場合3桁となり,減量や投与延長を余儀なくされた.
TMZは,1984年にStevensらによって開発された図1に示す構造式をもつ経口剤であり(図3)13).胃,十二指腸では変化を受けず,小腸に入り,アルカリ性の環境下で加水分解を受け,血中に吸収され,最終的に腫瘍組織に到達し,MDZIが腫瘍DNAをメチル化する.DTICと異なり,肝代謝を受けないため,肝障害の頻度が少なく,またDTICに比べて催吐性も低く,理想的な薬剤として1990年代に登場したのである.
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