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はじめに—目標とすべき脊柱骨盤アライメント
高齢者の脊柱変形では,胸腰椎の矢状面アライメントが健康関連QOLに関連することが知られている3,4,7,8,14,16).胸腰椎における局所前弯の減少や後弯変形に対して,胸椎前弯化,腰椎の過前弯,骨盤後傾,膝屈曲などの代償が生じて脊椎全体の矢状面アライメントが維持される(図1a).これらは,局所のアライメント不良に対して,脊柱骨盤全体のアライメントやバランスを保とうとする姿勢反射である.特に,骨盤後傾は体幹の前傾を防ぐ重要な代償機能である.健常ボランティアの横断検討では,女性は60歳代から骨盤の後傾が大きくなることが報告されている12).しかし,代償が強く働いている状態では体幹や下肢の筋に負荷がかかるために,QOL障害の原因となる.特に,筋力や脊椎可動性の乏しくなった高齢者では症状が顕著となる.
高齢者において,脊柱変形の矯正固定術を行う際にどのようなアライメントを矯正目標とすべきかについてはさまざまな意見がある2,13,15).高齢者の脊柱変形矯正固定術では,しばしば骨盤を含めた広範囲固定が必要となる.広範囲固定が行われた脊椎は,可動性を失った非生理的な脊椎である.そのため,手術時に骨盤での代償が残存した状態,つまり骨盤後傾のまま固定することは避けるべきである(図1b).われわれは,できるだけ代償の働いていない脊柱骨盤アライメントが成人脊柱変形,特に筋力に乏しい高齢者においては重要であると考えている.そこで,主要な代償である骨盤の後傾を改善し,立位での生理的な骨盤の位置まで矯正すること(図1c)を目標とする矯正角度を算出するためのフォーミュラを作成した.
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