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はじめに
胸腰椎から骨盤にかけての脊柱アライメント異常,いわゆる腰曲がりに対して,積極的に手術が行われるようになっている.特に矢状面アライメントの異常は,手術を受けていない患者のみならず術後の患者においても,痛みや日常生活障害に密接に関わる因子であることが過去の研究で明らかとなり3),矢状面,冠状面の弯曲に回旋が加わった複雑な変形である成人脊柱変形をどのように適切に矯正するかは,近年,脊椎外科医にとって最も重要な課題の1つである.
成人脊柱変形は,おおまかに,変性側弯症,二次性変性側弯症,後弯症に分類できる7,15).変性側弯症は,変性すべり症と同様に椎間板の加齢変性が主因であり,椎間板高の減少は腰椎の側弯のみならず後弯を引き起こす.変性側弯症は,60歳以上の発症で,進行が早く,比較的柔らかく,しばしば脊柱管狭窄を合併し,矢状面グローバルアライメント異常を認めるという特徴がある.一方で,二次性変性側弯症は,特発性側弯症が成人期まで遺残したものであり,特発性側弯症で認めるすべてのカーブの種類があり,一般的な変性側弯症とは性質が異なる.二次性変性側弯症は,進行が遅く,硬いカーブで,しばしば胸椎および腰椎カーブの移行部で後弯を合併するという特徴がある.また,変性側弯症より早期に,40歳台から外来に訪れる4).
後弯症も一次性と二次性に分類できる.最も一般的なものは多椎間の椎間板加齢変性による一次性の後弯症である.二次性の後弯症には,医原性である脊椎固定術後のものが含まれる.古典的には,特発性側弯症に対するHarrington法による矯正術後のflat back syndromeである1)が,今日多く遭遇するのは,多椎間の腰椎固定術(posterior lumbar interbody fusion〔PLIF〕,transforaminal lumbar interbody fusion〔TLIF〕)後の矢状面アライメント異常である.二次性の後弯症には,ほかに外傷後後弯が含まれる.比較的若年にみられる椎体骨折や脱臼骨折などの外傷後に後弯位で癒合した硬い後弯症と,骨粗鬆症を合併した高齢者の椎体圧潰や偽関節などの柔らかい後弯症に分けられる7,10).
脊柱管狭窄が主体の軽度変形例に対する治療が神経除圧と不安定性椎間の安定化であるのに対して,高度変形例では不良アライメントとグローバルバランスの改善が治療の主目的となる.われわれは胸腰椎から骨盤にかけての成人脊柱変形を,カーブの種類と柔軟性から5タイプに分けて治療を行ってきた10,12).本稿では,lateral interbody fusion(LIF)併用による低侵襲化にも触れながら,タイプ別の治療戦略について述べる.
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