Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
はじめに
脊髄動静脈奇形(arteriovenous malformation:AVM)は脊髄動脈系と静脈系の短絡を本態とする疾患であり,出血,静脈うっ滞やmass signにより発症する.
頭蓋内AVMの1/10程度の有病率という希少疾患であり,十分な経験をもつ施設が少ないことから,一般的な脳神経外科医が経験する機会が少なく,知識のup dateも十分なされていない可能性がある.
そもそも脊髄動静脈奇形という概念は,脊髄血管造影により診断され,その発展とともに理解が深まってきたという歴史的背景がある.血管造影上の形態に基づく分類から始まり,現在に至るまでその基本的なコンセプトは変わらないが,安全性の高い造影剤,選択的造影法の発達,高解像度の画像など,血管造影の進歩とともにさまざまな分類が提唱されてきた.その結果,多数の分類やterminologyが提唱され,非常に煩雑になっており,理解しづらく誤用も時にみられる.“脊髄AVMは難解な疾患である”と認識されることも少なくない.本稿では,これらの病型,分類,terminology,診断方法を整理することにより,脊髄AVMの理解を深めていただくことを目的とした.
なお,脊髄AVMはさまざまな病型を含んでおり,この疾患名は奇形(malformation)といいながら瘻(fistula)を含んでいる.この点は,頭蓋内AVMと頭蓋内硬膜動静脈瘻がそもそも違う疾患概念であることと対照的であり,脊髄AVMの理解を妨げている要因の1つとなっていると思われる.筆者は個人的には,後述する“spinal cord arteriovenous shunt”,“spinal vascular lesion”,“arteriovenous lesion”のほうが,この疾患を表現するのによりふさわしい呼称であると考えている(しかし,現時点でも統一された呼称はない).しかしながら,本邦でより馴染みの深いと推察されるという理由から,本稿では“脊髄AVM”として統一することとする.
Copyright © 2016, MIWA-SHOTEN Ltd., All rights reserved.