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Ⅰ.はじめに
脊髄動静脈シャントの画像診断の方法として,MRIによりくも膜下腔のflow void,脊髄の浮腫や出血を確認し脊髄動静脈シャントが疑われる場合,確定診断のために脊髄血管造影を施行することが一般的と考えられる.しかし,脊髄血管造影検査に関しては,脳血管造影に比べて検査時間が長く,技術習得までに時間がかかること,また侵襲的で合併症が起こり得ることなどが問題点として挙げられる.そこで,より侵襲性の低いMRIやCTにより,digital subtraction angiography(DSA)の代用もしくはDSAを行う前に有用な情報を提供するための役割が検討されてきた.
近年の画像診断技術の進歩に伴い,脊髄動静脈シャントの拡張したperimedullary veinやシャントポイントの同定,栄養血管(feeder)と考えられる分節動脈の把握など,より詳細な画像診断が可能となってきている.Gadolinium(Gd)enhanced MRAは,病変の存在部位やときには関与する分節動脈のレベルの把握にも有用であり2,5,11),multi-detector-row CT angiography(MDCTA)は多列化によって大幅な撮像時間の短縮に加え,広範囲の撮像が可能となり,時間・空間分解能の大幅な向上が得られた.特に冠状断像を注意深く観察することによって,分節動脈の左右,高位(レベル)の同定が可能になってきている.
脊髄動静脈シャントの中でも特に脊髄硬膜動静脈瘻(spinal dural arteriovenous fistula:SDAVF)では,feederとなる根動脈の硬膜枝は脊髄動脈に比べて相対的に径が大きく,他の脊髄動静脈シャントに比べ,MDCTAやMRAによる病変部やfeederの描出は容易とされ,その有用性についての報告が散見されている8,9,20).
これらの比較的非侵襲的な検査により,DSAを行う前に病変の部位,病変に関与する分節動脈のレベル,脊髄動脈との関係について評価することは,DSAの際に速やかな標的血管へのcatheterizationにつながるため,検査時間の短縮や造影剤の使用量を軽減できるという利点をもつと考えられる.
一方,動静脈シャントがinternal vertebral venous plexus(内椎骨静脈叢)に存在するspinal epidural AVF(SEDAVF)について,近年の画像診断の進歩により,従来想定されていたより頻度が高いと考えられている.
しかしながら,これまでSEDAVFのMDCTAについて詳細に述べられた報告はない.
今回,当院で最終的にSDAVF,SEDAVFと診断された症例のうち,MDCTAを施行した症例についてDSAの結果と比較し,MDCTAの臨床的意義やpitfallについてretrospectiveに検討した.
Purpose: Multi-detector-row CT angiography (MDCTA) is useful for diagnosis of spinal arteriovenous (AV) shunt. So we reported the role and pitfall of MDCTA based on our experience.
Subjects: From January 2007 to September 2011, 57 cases used MDCTA in our institution. We investigated 22 case of spinal dural AVF and 5 cases of epidural AVF.
Methods: All cases were performed by Toshiba Aquilion 64. FOV was the whole spine, curved planar reconstruction along the spinal canal, sagittal and axial view obtained by multi-planar reconstruction.
Results: MDCTA detected dilated the perimedullary vein in all cases and identified the level of segmental artery matching the result of DSA in 16 cases of spinal dural AVF (73%) and 1 cases of epidural AVF (20%).
Conclusion: MDCTA is useful for screening, and identifying the shunt point, but care needs to be taken concerning the particular pitfall of MDCTA.
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