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はじめに—diffuse idiopathic skeletal hyperostosis
1950年,Forestierとその弟子であるRotés-Querolにより,“senile ankylosing vertebral hyperostosis”として報告された骨増殖症は,その後に脊椎のみならず全身に発症し得ることが知られたため,1976年にResnickとNiwayamaにより“diffuse idiopathic skeletal hyperostosis(DISH)”として提唱された.Forestier以降,同様の報告例はあったものの,Resnickらの報告はそれまでの報告と異なり,以下に示す診断基準を提示したことで明瞭な病態として認識され,現在でも多くの論文で引用されている.診断基準は,①“flowing”と形容される石灰化または骨化を少なくとも4つの連続した椎体で認めること,②罹患領域で,椎間板腔が比較的保たれていて,vacuum現象や椎体辺縁の骨硬化などの椎間板変性を示唆する所見を認めないこと,③仙腸関節部でのerosion,硬化,骨癒合を認めないこと,のすべての条件を満たすことが必要である.本邦では,現在でも強直性脊椎骨増殖症(ankylosing spinal hyperostosis:ASH)として呼ばれることがあるが,Pubmedによる検索では1990年以降でタイトルにASHとして記載された英語論文は3本のみであり,いずれも日本人の著者によるものである.2000年以降,英文ではDISHもしくは強直性脊椎炎(ankylosing spondylitis:AS)を含めてankylosing spinal disorder(ASD)として報告されることが圧倒的に多く,本稿ではDISHに統一して記載を行う.
DISHは全身的な非炎症性の疾患であり,その骨化形態は腱や靭帯,関節包が骨に接着するenthesisに発症することが特徴とされる.現在までにその原因の特定はできていないが,大血管を避けて骨化が進展することから力学因子13,18),COL6A1などの遺伝子因子16),ビタミンA,合成レチノイドやetretinateなどの薬剤・環境因子2,3),糖尿病などの代謝性疾患との関連6)が指摘されている.また,性別では女性よりも男性に多いとの報告が多い5,19,20).Weinfeldら19)は,University of Minnesota Hospitalにて撮影した1,363人の胸部X線を用いてDISHの有無を検討した.その結果,50歳以上の男性では25%,50歳以上の女性では15%にDISHが認められ,最も多くみられるのは白人系であり,アフリカ系アメリカ人,ネイティブアメリカン,アジア人ではその頻度が少なかったことを報告している.人種による差があることは,韓国からの報告でもみられる.Kimら5)は3,595人の胸部X線写真側面像を調査し,有病率が2.9%であったことから西欧諸国からの報告19,20)(17〜25%)と比較してアジア人では有病率が低く,人種間の違いが発症に影響している可能性を示唆している.
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