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はじめに
20世紀の初頭にはGoldthwaitら9)が仙腸関節と腰下肢痛との関連を指摘し,仙腸関節固定術も行われていた.しかし,1934年Mixterら15)が椎間板の突出により神経痛が生じると発表して以来,坐骨神経痛を含む腰下肢痛の原因が腰椎の椎間板に求められ,仙腸関節はあまり注目されなくなった.その背景には,可動域が少なく不動関節に近い仙腸関節が腰痛の発痛源にはなり難いとの認識があったと思われる.しかし,近年幾多の報告で,仙腸関節が腰臀部痛や,鼠径部から下肢,足にも症状を出すことが指摘され3,6,27),仙腸関節後方の靭帯群には侵害受容器の存在が確認された24).仙腸関節が腰痛の発痛源の1つであると認識されつつある.
人類が四足歩行から二足歩行に進化する中で,骨盤への負荷は比べものにならないほど増大し,負荷に対応するために骨盤の形が大きく変化した10).骨盤を構成する仙腸関節は上半身の負荷をしっかりと支えると同時に,下肢からの衝撃も緩和する役割を,わずかな可動域で対応している.そのため,不意の動作や,反復する負荷に対応できない場合には,微小な関節の不適合が生じて,関節の機能障害(仙腸関節障害)を容易に起こし得る.また,関節炎などの関節腔内の炎症による痛みも存在する.
これらの痛みに対して,安静,ベルトによる固定,鎮痛剤の内服,理学療法,仙腸関節ブロックなどの保存療法が行われる.しかし,保存療法で改善しない場合には,最終的に仙腸関節の固定術が選択される.これまで多くの後方固定術2,13,30),側方固定術8,28),あるいは前方固定術1,21,22)が試みられてきたが,十分な成果は得られていない.近年,後方からのDIANA法(distraction interference arthrodesis with neurovascular anticipation)5)や側方からのiFuse implant systemが開発されて,欧米で多くの患者に行われ,良好な成績が報告されている23).しかし,いまだ短期成績であり,長期の成績が待たれる.われわれは後方法,側方法では関節面の十分な関節掻爬,骨移植は困難と考え,直視下で関節の操作を行う前方固定術を中心に行ってきた18).5年以上経過した手術症例の成績を検討した.
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