- 有料閲覧
- 文献概要
最近,日本の伝統技術や製品に携わる職人といわれる人たちを取り上げるテレビ番組が多々放映されているようです.先日そのような番組の中で,福島県の会津にある鬼ぐるみの加工場が紹介されているのをみる機会がありました.その加工場では,茹でたくるみの殻から実を取り出すのに実を崩さないため職人さんたちが手作業で実を取り出していました.この道20〜50年のいわゆるおばちゃんたちが金槌で殻を割っており,その際1度軽く叩きその音で殻の固さを感じ取り,2度目の叩打で殻を割るとの話をされていました.脊椎外科において椎弓をノミで切除するのと同じだと感じました.この技術を習得するには数多くの殻割りの失敗があったことは十分想像できましたが,熟練した技術を後継者不足ではあるでしょうが次の職人さんへ伝えていってほしいものだと考えました.
脊椎外科を含む外科系技術や侵襲的検査の技術の伝承は簡単には行えないことは,各医療機関の指導医の先生方は十分理解されていると思います.くるみの殻を割ることの失敗と違い,脊椎脊髄外科においては手技のまずさが不可逆的後遺症を残すこともあり,指導においては細心の注意を払っていると思います.では,脊椎脊髄外科だけでなく若手外科系医師が初めて手術や侵襲的検査を執刀する際に,患者はその医師がどのようにトレーニングを行ってきたか,自分の受ける手術の経験は豊富なのかを知っているのでしょうか.もちろん,そこの部分も十分にインフォームドコンセントすることもあるでしょうが,おそらく暗黙の了解といった日本的な合意の中で手術,処置,検査が行われるケースが多々あるのではと推測します.もっとも,手術,検査中は指導医が自らの執刀以上に注意を払い,良好な結果が得られるのが普通と思います.
Copyright © 2015, MIWA-SHOTEN Ltd., All rights reserved.