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運動器を扱う整形外科も,消化器外科や呼吸器外科,泌尿器科,婦人科などと同様に低侵襲手術が普及している.関節外科は鏡視下手術が日本から世界に向けて発信され,その後の手術機器の著しい進歩により,膝関節に限らず多くの部位で鏡視下手術が行われている.脊椎外科も鏡視下手術が導入され,腰部椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症の手術に広く適応されている.この鏡視下手術の普及と並行して,脊椎低侵襲手術に向けた各種手術機器が次々と開発され,脊椎外科領域も鏡視下手術と併せ完全に低侵襲手術が主流になってきている.そんな中,2009年には最小侵襲脊椎手術(Minimally Invasive Spine Surgery:MISS)領域の一分野として最小侵襲脊椎安定術(Minimally Invasive spine Stabilization:MISt〈通称ミスト〉)が提唱され,注目されている.MISt手技の基本概念は,より低侵襲に脊椎を固定ないし制動する,いわゆる安定化させる手術手技である.近年では手技,手法の多様化と,それに特化したインプラントが数多く導入され,臨床応用されている.このMIStも現在,手技が安定化し,臨床例も多く蓄積されつつあり,その治療成績が報告され始めている.そして,これらの分析から従来法との比較,利点や欠点,限界なども明らかになってきている.
そこで本特集では,MIStの代表的な手術手技に関して,それぞれの基本コンセプト,適応疾患,従来法との比較,治療成績,利点と欠点,問題点や限界,最新の知見と今後の展望などについて,この領域で現在活躍中の脊椎外科医に執筆をお願いした.各執筆者のご協力に対し,この誌上をお借りして感謝を申し上げたい.本号では,まずMISt手技と経皮的椎弓根システムの現状と未来について概説していただき,各論としてMIS-PLIF/TLIF,MIS-long fusion,外傷に対するMISt,CBT,XLIF,OLIFを紹介し,最後にBKPも取り上げ,わが国のMIStの現状をすべて理解していただけるように企画した.このように本号は,今後脊椎外科を目指す若手医師,また最小侵襲脊椎外科に取り組んでみたい脊椎外科医,そして現在,この手術手技を専門として活躍中の脊椎外科医にとって,きわめて参考になる特集と思われる.是非ご一読ください.
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