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特集 脊椎脊髄の冠名徴候・症候群
Ⅱ.冠名症候群
Erb麻痺・Klumpke麻痺
Erb Palsy and Klumpke Palsy
河村 由生
1
,
藤田 之彦
1
Yuki KAWAMURA
1
,
Yukihiko FUJITA
1
1日本大学医学部小児科学系小児科学分野
1Department of Pediatrics and Child Health, Nihon University School of Medicine
キーワード:
腕神経叢麻痺(brachial plexus palsy)
,
Erb麻痺(Erb palsy)
,
Klumpke麻痺(Klumpke palsy)
Keyword:
腕神経叢麻痺(brachial plexus palsy)
,
Erb麻痺(Erb palsy)
,
Klumpke麻痺(Klumpke palsy)
pp.394-396
発行日 2015年4月25日
Published Date 2015/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5002200118
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はじめに
Erb麻痺・Klumpke麻痺は,どちらも分娩麻痺の一種である.分娩時の外力により新生児の末梢神経が圧迫されたり,過度に伸展したりして損傷を受けると,その神経支配領域に運動麻痺が起こる.これを分娩麻痺と呼ぶ1).その代表的なものが腕神経叢麻痺であり,児頭と肩甲が引き離されるような外力がかかることにより神経根が損傷し発生する(図1).神経損傷の病態は節後損傷(一過性神経不働化,軸索断裂,神経断裂)から節前損傷(神経根引き抜き損傷)までさまざまであり,障害の程度で回復に要する時間も大きく異なる.多くの症例は自然回復するが,予後不良な重症例に対しては神経修復術が必要である.
分娩麻痺は出生体重4,000g以上の巨大児に発生しやすいといわれている.巨大児では頭よりも肩幅が大きい傾向にあり,肩が産道の狭窄部を通過しにくい肩甲難産となり分娩麻痺が生じる.また,骨盤位分娩では頭部の娩出が困難であるため過大な牽引力がかかり,出生体重にかかわらず発生しやすい.頭位分娩では分娩時の回旋方向から右側罹患が多く,骨盤位分娩では両側例も少なからずみられる2).分娩麻痺の発生頻度の詳細は不明だが,1,000出生あたり0.4〜2.6といわれている.
腕神経叢麻痺は症状により上位型(Erb麻痺),下位型(Klumpke麻痺),全型に分類される.分類は概ね1カ月を経過した時点で行う.
分娩麻痺は出生直後からみられる上肢の麻痺,特徴的な肢位により診断できる.上位型麻痺では患側のMoro反射が陰性になり,全型麻痺では把握反射も欠如する.補助診断として,鎖骨骨折などの偽性麻痺を除外するためにX線検査を行う.
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