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特集 脊椎脊髄の冠名徴候・症候群
Ⅰ.冠名徴候
第7章:その他の徴候
Pottの3徴候
Pott's Triad
井澤 一隆
1
,
米延 策雄
2
Kazutaka IZAWA
1
,
Kazuo YONENOBU
2
1独立行政法人国立病院機構刀根山病院整形外科
2滋慶医療科学大学院大学医療管理学研究科医療安全管理学専攻
1Department of Orthopaedic Surgery, Toneyama National Hospital
キーワード:
脊椎結核(spinal tuberculosis)
,
下肢麻痺(paraplegia)
,
後弯変形(kyphosis)
Keyword:
脊椎結核(spinal tuberculosis)
,
下肢麻痺(paraplegia)
,
後弯変形(kyphosis)
pp.354-356
発行日 2015年4月25日
Published Date 2015/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5002200105
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Pottの3徴候とは,進行期の脊椎結核における3つの典型的症状,すなわち下肢麻痺,脊椎後弯変形,膿瘍形成を指す.これらの症状が肺疾患に合併することはHippocrates(c. 460-c. 370 BC)も記述していた1).しかし,3つの徴候に明らかな関連性をもたせたのは英国の外科医であるPercivall Pott(1714-1788)が最初であり,脊椎結核を指すPott病という呼称とともに後世に名を残すこととなった.ただし,Pott自身がこれらの症状を「3徴候」として記述しているわけではなく,ほかのPottの冠名用語と同じく後に名づけられたものである.
Pottの最初の報告の題名は「脊椎弯曲を頻繁に伴う下肢麻痺に関する報告」であり,脊椎炎に関してではなく下肢麻痺の病態と治療という観点から報告している2).3つの徴候については,特に下肢麻痺について詳細に記載され,次いで後弯,膿瘍に関して述べられている.元の論文の要旨は「後弯変形を伴う下肢麻痺に対する後弯矯正は無意味であり,膿瘍ドレナージが有用な治療法である」ということであった.各々の徴候をただ羅列的に述べているわけではなく,麻痺発症の原因と治療法の発見に至るまでの経緯が論理的に述べられており,そこにこの報告の真価があるといえる.以下,彼が補遺としてまとめたもう1編3)の内容と併せて解説する.
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