脊柱変形の臨床症状—胸腰椎・骨盤：QOL，全身症状（GERD，易転倒性など）

QOL and Systemic Symptoms of Adult Spinal Deformity（GERD, Falls）

はじめに

　高齢者における脊柱変形は，外見上の問題に加えて，腰痛や腰部疲労感，冠状面や矢状面のバランス不良，椎間孔や脊柱管狭窄に伴う下肢痛，歩行障害などを引き起こし，大きなADL障害をきたすことから，成人脊柱変形（adult spinal deformity：ASD）に関する臨床研究は大きな注目を集めている．近年，矢状面パラメータが患者立脚型の健康関連QOL（HR-QOL）スコアに最も影響を与えることが明らかにされており，2012年に報告されたScoliosis Research Society（SRS）-Schwab ASD分類にもsagittal vertical axis（SVA），pelvic tilt（PT），pelvic incidence（PI）-lumbar lordosis（LL）とOswestry Disability Index（ODI）との関連が取り入れられている^22）．

　脊椎はさまざまな臓器に取り囲まれていることから，ASDではこれら脊椎や脊髄に関連した障害にとどまらず，脊柱変形に伴い全身にも影響を与える可能性が考えられる．本稿では，易転倒性や胃食道逆流症（gastroesophageal reflux disease：GERD）などの全身の症状やその病態について概説を行う．